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小規模木質バイオマス発電

(一社)日本木質バイオマスエネルギー協会は、小規模木質バイオマス発電事業の推進のため、事業化のポイントや導入の流れ、様々な技術やコスト構造モデルをわかりやすくまとめたガイドブックを作成いたしました。本ページからガイドブックのデータをダウンロードいただけます。

小規模木質バイオマス発電のすすめ

2012年の再生可能エネルギーの固定価格買取制度(FIT)施行以降、全国で木質バイオマス発電事業化の動きが活発化し、5,000kW級以上の発電所が各地で計画・運転を開始しています。

IT制度にて認定を受けている木質バイオマス発電のうち、国内で発生する間伐材などの未利用木質バイオマス燃料がメインとなっている発電所は、56ヶ所(2015年10月時点)と全国各地に広がりました。このうち、7割以上が5,000kW以上の規模であり、これらの木質バイオマス発電所を稼働させるには、多くの木質バイオマス燃料が必要な状況となっており、燃料の集荷範囲が数十km圏と広くなっています。

一方で、燃料調達の面からは集荷範囲を狭め、よりコンパクトな規模で行う「小規模木質バイオマス発電」への期待が高まっています。小規模発電は発生する排熱を周辺で利用することもでき、木材の持つエネルギーをフルに活用することもできる環境に優れた技術です。コンパクトなエリアで地域主導での事業形成が可能で、小規模発電による地産地消エネルギーの分散化が進むことで、地域の活性化にも効果が期待されます。

小規模木質バイオマス発電の買取価格

2015年度より、 FIT制度の買取価格に、新たに木質バイオマスの“小規模枠”が設けられ、出力2,000kW未満の間伐材等由来の木質バイオマスを原料とした発電事業については、40円’kWhの買取条件が設定されました。これまで採算面から事業化が困難だった小規模発電を、 国としても普及を推進しています。

欧州で進む小規模発電

ドイツやオーストリア、イタリアをはじめ欧州各国では木質バイオマスの小規模発電の取組が普及しています。 ドイツではFIT制度の中で小規模優遇の買取条件を設定し、2004年の改正でコージェネレーション(CHP)や技術 によるプレミアを付与したことで、ORC(Organic Rankine Cycle)やガス化を利用した小規模発電の導入件数が 加速的に増加しました。それを活かしたエネルギー村の取組など、地方都市、農村の活性化にも大いに効果を 上げてきています。さらに、2012年の改正で、CHPが義務化され、熱利用が難しい大型の蒸気タービン式の 発電所が伸び悩む一方、熱利用がしやすい小型のガス化発電が急速に増加しました。

小規模木質バイオマス発電を導入するには

 木質バイオマス発電を導入する流れとしては、大きく3段階に分けることができます。 まず、燃料面や資金面、環境面等について調査を行い、地元の林業関係者や金融機関、自治体との合意形成をします。 次に、導入する発電施設の設備の検討や熱利用に関する調整、電力会社や国・都道府県等、関係事業者と協議 します。その後、発電事業に関する手続きを進め、施設を建設・稼働させて、発電事業を開始することができます。

小規模木質バイオマス発電事業化のポイント

燃料のサプライチェーンの構築

小規模発電では、大規模発電と比較するとより安価に燃料を調達することが求められます。集荷エリアをコンパクトに 絞り込み、リーズナブルに安定調達するためのサプライチェーンを構築することがポイントです。

ガス化発電の導入を想定している場合は、求められる燃料規格に対応するための原料の確保や加工拠点との連携を考えていくことも必要です。

条件を踏まえた技術選択

燃料の調達規模や調達可能な燃料の種類(生チップ、乾燥 チップ、ペレットなど)、熱需要の規模や種類(蒸気、温水)、 性状(温度、圧力)など、導入場所の条件を踏まえた技術選択をすることがポイントです。

また小規模木質バイオマス発電は、開発段階、実証段階の技術も多いため、実績ある技術を選択することも重要です。

熱のデマンドサイドからの事業構築

小規模発電では、発生する熱の売熱価格が採算性確保の上でのポイントとなります。一定の熱需要が見込めるサイ トでの事業化検討、あるいは熱ユーザーが自ら事業を行うなど、デマンドサイドから事業を構築することが有効です。

採算性を踏まえた燃料選択の最適化

FIT制度による売電価格とは異なり、売熱の単価は燃料区分 によらず一定の単価となります。熱電合わせた事業収支を考えると、未利用木材にこだわらず一般木材を利用した方 が優位なケースも考えられます。地域の木材の流通状況や価格をよく調べて、採算性を踏まえて燃料選択をすること がポイントです。

相対での熱供給契約

発電システムから発生する熱の売熱は、基本的には発電事業者と熱需要者との相対による供給契約となります(一部、熱供給事業法の適用事業を除く)。料金メニュー、契約期間、供給責任などの条件を双方で取り決めしていく必要があります。 原燃料の市場価格変動リスクや熱供給先の脱退リスクなども加味して、適切な契約条件を策定することが重要です。

まちづくりと一体となった事業形成

地域資源であるバイオマスを活用して地域により大きな効 果を生み出していくためには、まちづくりと一体となって、システムの各段階で丁寧な仕組みづくりを行うことが有効です。原料調達はさることながら、プラント運営に係る地域主導の体制構築や熱の利用サイドにおける地域産業振興など、あらゆる工夫をすることで、地域活性化、地方創生にも大きな効果が期待されます。

小規模木質バイオマス発電の技術選択

小規模発電で有望な技術として「小型蒸気タービン」、「ORC(Organic Rankine Cycle)」、「ガス化発電」 があげられます。ORCやガス化発電は、欧州では豊富な実績を有し、活躍している技術で、これから国内においても普及が期待されています。

それぞれの技術は導入規模、熱の利用形態、原料規格、オペレーションなどで異なる特性を有しており、地域ごとの条件を踏まえて、正しい技術選択のもと、導入を進めていくことが大切です。

出力規模と排熱特性

それぞれの技術ごとに設備費、発電効率、ランニングコスト等の違いがみられ、事業採算性の構造も異なることから導入する出力規模も異なってきます。発電出力の規模帯でみると、2,000kWに近い規模では蒸 気タービン、数百kW以下の規模ではガス化発電、その間の中規模帯がORCといった棲み分けとなります。 最近では2,000kW級のガス化発電もみられるようになっています。

発電に伴い発生する熱の規模も異なるため、それに応じた熱供給先の確保が求められます。

また、熱の性状が、ORC、ガス化発電の場合には、80~90℃の温水、蒸気タービンの場合は蒸気(抽気による 高圧蒸気、タービン排熱の低圧蒸気)と、性状が異なるため、熱利用の際には考慮する必要があります。

燃料要件

燃料の性状は燃焼の安定性、発電効率、発電出力、燃料消費量、設備トラブルに影響し、採算性にも大きく関わってきます。

燃料の品質の順守徹底は非常に重要なポイントになります。 蒸気タービンやORCは、ボイラや投入口の設計次第で高水分率の生木・枝葉、さらには形状が不均一な燃料の使用も可能ですが、設計条件と異なる品質の燃料を用いると効率が低下したり、燃焼が不安定になることがあるので注意が必要です。

ガス化発電は、ペレットや乾燥チップが用いられるなど、含水率、形状、灰分、組成など、木質燃料でも高い品質の燃料が求められますが、小型でも高い発電効率が得られます。

オペレーション

技術や規模等の導入条件により、発電所のオペレーションの要件が異なります。
蒸気タービンの場合、「電気主任技術者の選任」「ボイラー・タービン主任技術者の選任」「設備の常時監視」 が必要となります。

それに対し、ORCとガス化発電の場合、規模によって電気主任技術者の委託が認められています。ボイラー・ タービン主任技術者については、小規模(数百kW未満)のガス化発電の場合は不要とされており、ORCの場合は規模による選任の緩和が認められています。また小規模のガス化の場合は遠隔常時監視制御が可能で、 夜間の無人運転が可能となっています。ORCの場合は、現状では常時監視が必要となっており、現在、欧州での無人運転の実態調査が進められています。

蒸気タービンシステム概要

蒸気タービンシステムは、高温高圧の水蒸気でタービンを回して発電する方式であり、火力発電所では古くから用いられている技術です。バイオマス発電にも適用され、豊富な運転実績を持ち、技術的な信頼性に優れたシステムです。蒸気タービンの形式には、高い発電効率が得られる復水式、タービンで発電利用された蒸気をタービンの途中から比較的高い圧力で取り出す抽気式、タービンの出口から比較的低い圧力の蒸気を大量に取り出す背圧式など様々なオプションがあります。そのため製材工程、製紙工程をはじめとする様々な産業界で幅広く熱源として利用され、豊富な実績のある発電技術です。

蒸気タービン発電は大規模化することで高効率化や低コスト化が図られてきました。発電事業による採算性は規模が大きくなるほど向上しますが、バイオマス発電では燃料収集の制約から大規模設備は望めないため、北欧などではコージェネレーション(コージェネ)利用することにより採算性向上と熱効率向上が図られています。国内では大量の熱を年間を通して安定利用するのは容易ではなく、普及の障害となっていましたが、平成27年度に新たに追加された、「FIT40円/kWh」枠を適用した2,000kW級の蒸気タービンを適用したコージェネ事業が期待できます。また発電効率改善を優先した設計により、発電専用での採算性を目指した技術開発も進められています。小型の蒸気タービンシステムは他の発電方式に比べて発電効率の点では劣りますが、信頼性の高い技術で幅広い熱需要への適応力などの特長を持ちます。

技術特性

  • 高い熱効率
  • 安定したプラント稼働
  • 長期連続運転が可能
  • 各種熱需要を活用することで高効率化可能
  • 高度な維持管理技術、メンテナンス体制構築済み
  • 豊富な実績にもとづく高い設備稼働率

導入要件・仕様例

導入イメージ

蒸気タービンシステムによる発電は、FIT制度以前から実施されており、FIT制度以降でも、発電専用として利用されているケースが大半を占めています。

一方、発電と共に熱利用しているケースも複数あり、製材工場や製紙工場など、産業用に利用されている事例があります。

ORCシステム概要

ORCシステムは、蒸気タービンと同じくランキンサイクルによる発電方式の一種で、蒸気タービンとは異なり熱媒として水ではなく、有機媒体(シリコンオイル等)を利用して発電を行う技術です。具体的にはバイオマスボイラで加熱されたサーマルオイル(310℃)がORCユニット内でシリコンオイルと熱交換し、そのシリコンオイルの蒸気によりタービンを回転させて、発電を行うものです。タービンの冷却水は80℃〜90℃の温水として供給され、暖房・給湯用や産業用の熱源として利用可能です。

小規模でも高い発電効率(出力600kWで19%)、メンテナンスの負担が少ない、さらに欧州では無人運転が実施されるなどオペレーションの負担が少ないことが特徴としてあげられます。またボイラの設計次第で、高含水率の雑多な燃料も利用可能です。これらの特徴を活かし、さらに発生する熱による売熱収入を得ることで、小規模でも採算性の見込める技術です。

国内での実績はまだありませんが、欧州ではすでに200基以上の導入実績を有する確かな技術で、「FIT40円/kWh」枠の適用により、今度国内での普及も期待されます。

技術特性

  • 小規模でも高い発電効率
  • 熱と合わせた高いエネルギー効率
  • 低負荷運転に強く、出力変動の幅が広い
  • 熱媒体の使用圧力が低く安全
  • 機械的ストレスが低く、タービンの浸食もない
  • 燃料の許容の幅が広い(ボイラ設計次第)
  • 無人運転が可能(但し日本では常時監視が必要)

導入要件・仕様例

導入イメージ

欧州では既に200基以上のバイオマスを熱源としたORCの導入実績があります。

製材工場では発生する材を利用してORCで発電し、排出される温水による数万㎥級の製材乾燥やベルトドライヤ―と呼ばれる乾燥機との組み合わせで数万t級のペレット原料の乾燥を行っている事例が多々みられます。

1,000kW級のORCを導入し、2〜3km離れた1,000世帯程度の地区への地域熱供給の事例も各地でみられます。

ガス化システム概要

ガス化システムは、木質バイオマスをチップ化または、ペレット化した燃料を使用し、熱分解・還元反応 によりガス化し、そのガスを燃料として、エンジンで発電を行うシステムです。

この方式の小型(発電能力20〜400kW)のクラスは欧米において1,000基以上の豊富な実績を有し、東南アジアでも盛んに開発導入され始めています。また、2MWのクラスも実績は少ないですが、欧州で稼働しています。

ガス化発電は小規模でも発電効率が20〜30%と高いのが特徴です。さらに、発電出力に対して2〜2.5倍 の熱が回収され、総合効率は70〜80%になります。熱は80〜90℃の温水として供給され、地域熱供給、 給湯、冷暖房、温泉・プールの加温、温室の冷暖房、食品加工、木材加工などに利用され、小規模な地産 地消型のエネルギーシステムに適しており、欧州では数百もの事例があります。

商業化された小型ガス化システムは燃料と空気の流れ方により大きく固定床式(移動床式)と流動床式に分類されます。固定床式(移動床式)では下向並行流型(ダウンドラフト型)の Spanne(r スパナー)社や

Volte(r ヴォルター)社、上向並行流型では Burkhard(t ブルクハルト)社、下向並行流型と上向並行流型の 混合型(A.H.T社)、上向行流型(アップドラフト型)では Babcok & Wilcox Vølund(フェルント)社などがあります。流動床式では循環流動床型の Gussing Renewable Energy(ギュッシング リニューアブル エナジー)社や Tyssenkrup Otto(ティッセンクルップ オットー)社などがあります。

技術特性

  • 小規模でも発電効率は22〜30%と高い
  • 熱と合わせた総合エネルギー効率は70〜80%と高い
  • 炉内に可動機械部分がなく、機械的トラブルが少ない
  • オペレーターの常駐が不要
  • 必要な有資格者は電気主任技術者のみ
  • 設備がシンプルでコンパクトであり、設置面積が少ない
  • 標準型設備を複数台並べることで、出力を増加することが容易

導入要件・仕様例

導入イメージ

ガス化発電は、規模が小さいことから、小規模の熱利用でも転用することができることが特徴で、国内でも温浴施設や宿泊施設などに熱供給して導入されているケースがあります。そのほか、温水を利用した熱利用が想定され、木質燃料の乾燥設備やハウス栽培などの農林業関連の利用も検討する余地があります。

小規模木質バイオマス発電のコスト構造モデル

小規模木質バイオマス発電のコスト構造モデルについて、基本的なパターンによる事業収支モデルと発電コストの感度分析のモデルを示します。いずれも未利用木材を利用し、40円/kWhでのFITによる売電を想 定したモデルです。

ここで示すコストモデルはあくまでも仮定の条件を積み上げた参考モデルです。事業を計画する際には、地域における燃料の調達条件、熱利用先の条件、建設コスト、オペレーション方法などの諸条件を整理して、 詳細な分析を行うことが必要です。

蒸気タービンシステムのコスト構造モデル

発電出力1,600kWの蒸気タービン方式の場合、燃料として未利用木材チップを45,000t/年、9,000円/tで調達し、 6,300kW(蒸気または温水)の熱出力に対して年間65%以上の利用が可能となれば事業収支が確保されます。発電 コスト、及びIRRはチップ単価に大きく左右されるため、安価で安定的なチップの調達がポイントとなります。

ORCシステムのコスト構造モデル

発電出力1,000kWのORCシステムの場合、未利用木材チップを20,000t/年、9,000円/tで調達し、4,100kWの熱出力に対して年間65%以上の利用が可能となれば、P-IRR 5%程度の事業性が確保されます。安価な燃料の確保と十分な熱需要の確保がポイントとなり、チップ価格が9,000円/tで熱利用率(6円/kWh)が80%の場合、発電コスト は30円/kWhまで引き下げることが可能です。

ガス化システムのコスト構造モデル

発電出力165kWのガス化システムの場合、未利用木材系のペレット900t/年、35,000円/tで調達し、260kWの 熱出力に対して年間65%以上の利用が可能となれば、P-IRR 5%程度の事業性が確保されます。現状の国内の間伐材 系ペレットの流通価格では厳しい側面もありますが、今後国内で展開が見込まれる大規模生産拠点の整備により、30,000円/t程度のペレットが調達できると、発電コストは32円/kWhまで引き下げることが可能です。